ばーさんの料理本 (第8回 / 全8回)

こんにちは、コトリ1号です。
数日遅れの更新になってしまって、申し訳ありません。

ばーさんがじーさんに作る食卓(4)2008』で登場した料理本65冊を紹介するシリーズも、今回で最終回。まさか、こんなにたくさんあるとは思わなかったので、全部をご紹介するまでにだいぶかかってしまい、大変ジリジリさせてしまいまして申し訳ございません。拙い紹介ですが、cincoさんファンの皆様、料理本好きの皆様の参考になれば、幸いです。

今回は、前田廸子さん、丸山久美さん、山田宏巳シェフ、吉田勝彦シェフ、李映林さん&ウー・ウェンさん、レヌ・アロラさん、の本を紹介します。ざっくりいっちゃうと、北欧で、スペインで、イタリアで、中国で、韓国で、インドな8冊です。

他の回で紹介した料理本もそうですが、とにかく蔵書がワールドワイド。「本棚を見れば、その人が分かる」……なんてのはおこがましい話ですが、未知の味覚への好奇心が旺盛なことだけは間違いないと思います。この幅広い好奇心が、無国籍で素敵なcinco流のモトなのだなぁ、こういうばーさんになりたいものだと、つくづく思わされたのでした。

2008年の1年間だけでこれですので、2009年もさぞや…と若干ドキドキなのですが、次回、『ばーさんがじーさんに作る食卓(5)2009』刊行時(発売日は、11月1日を予定しております)にも、ぜひ、同様のシリーズをご紹介させていただこうと思っております。どうぞ、お楽しみに。

過去記事はこちらからもぞうぞ
第0回(プロローグ) 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回

 

北欧のキッチンでおぼえた イースト菓子とパンの本

白馬出版 1993年
前田廸子(みちこ)
◎ アーモンドスクエア、こねない黒パン
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コトリ1号メモ : 「北欧のキッチンでおぼえた…」とある通り、クネッケブロート(ライ麦で作った薄焼きパン)、ミットマットブロー(ライ麦パン)、レフセ(じゃがいも入りパンケーキ)といった、北欧のパンを中心に紹介されていますが、イングリッシュマフィンやスコーン、ベーグルなど、おなじみのパンも紹介されています。紹介しているパンは16種類とやや少なめなのですが、このバラエティ豊かなラインナップのおかげで、物足りなさは感じません。個人的には、全粒粉やライ麦、そば粉など、精製粉以外の粉を使うレシピが多いのが嬉しいです。
この本に載っているパンは、以前からちょこちょこ登場していましたが、アーモンドスクエアは2008年に初登場(2月4日)。「お菓子作りは少し苦手」とおっしゃるcincoさんですが、パンに似た感覚で作れるこれは相性がよほどあったようで、2008年だけで4回も登場。その後も、sesentaさんの職場への差し入れの際に幾度となく登場する「得意メニュー」のひとつになっていきます。
この本の表紙を見ると、そのアーモンドスクエアが平皿の上に盛られた写真のように見えますが、実は、これ、カバーが厚手のトレーシングペーパーに印刷されており、カバーにはアーモンドスクエアが、表紙(書籍本体の一番外側の部分)には平皿が印刷されていて、カバーをかけると器の上にパンがある…と見える仕組みになっています。裏は、カバーにはパンくず、裏表紙には北欧雑貨っぽい卓上箒が印刷されていて、こちらも可愛らしいデザイン。こんな風に表紙周りで遊べるのは、(作り手にとっても、読み手にとっても)紙の本の楽しさのひとつですよね。

 

週末はパエリャ名人

文化出版局 2003年(1,500円+税)
丸山久美
◎ あんこうのパエリャ、白身魚といかとカリフラワーのパエリャ、ねぎのパエリャ、じゃがいもと玉ねぎとトマトのパエリャ、きのこのパエリャ、いわしのパエリャ
Amazon 文化出版局

コトリ1号メモ : 前回(第7回)ご紹介した『おいしいイタリア野菜料理教室』、第2回で紹介した『黒酢でおかず』、そしてこの本の3冊が、『ばーさんがじーさんに作る食卓(4)2008』で最も登場頻度の高かった3冊です。
タイトル通り、パエリャに的を絞った本で、「シンプルパエリャ」「ふだん着のパエリャ」「おもてなしのパエリャ」「季節のパエリャ」の4章構成で18種類のレシピを紹介しています。パエリャというと、エビは必須でほかにムール貝やイカなど複数の魚介を用意して、出汁を取らなきゃいけないのかな……と思いがちですが、そんなことはなく。じゃがいも・たまねぎ・トマトのパエリャとか、ねぎのパエリャ、きのこのパエリャなど、心理的ハードルをグッと下げてくれるレシピも多いのが嬉しいところです(もちろん、豪華版のレシピもしっかりあります)。
パエリャだけでなく、サラダや前菜、スープやちょっとした飲み物なども一緒に紹介してくれているので、家でスペインな気分を味わうにはうってつけの1冊だと思います。
ちなみに、cincoさんがお使いになっているパエリャパンは、赤い持ち手が可愛い、EL CID(エル・シッド)社の30センチだそうです(おおよそ4人前の量が作れます)。ご参考までに。

 

豆とスープが待つ食卓
―簡単だけど豊かなスペインの台所仕事

文化出版局 2005年
丸山久美
◎ 白いんげん豆とあさりの煮込み、赤いんげん豆とガルバンゾのクリーム煮
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コトリ1号メモ : 世界中どこに行っても、豆料理は庶民の日常食として、その国や地域ならではの食べ方があります。もちろん、スペインだってそう。この本では、「スペインの豆料理」と題して、赤いんげん豆(うずら豆)、白いんげん豆、レンズ豆、ガルバンゾ(ひよこ豆)、グリーンピース、そら豆を使って、メインディッシュ、ランチ、おかず、サラダ、デザートの5項目で、29種類の豆料理を紹介。後半は「スペインの季節のスープ」として、チキンスープをベースにした春夏秋冬の季節のスープを22種類紹介しています。
素材の組み合わせや、香辛料、風味付けなど、端々にスペインを感じさせるレシピが多く、ちょっといつものスープの雰囲気を変えたいな……なんて時にめくると、参考になります。

 

スペインから届いた、ほっとやさしいレシピ

文化出版局 2008年
丸山久美
◎ 赤ピーマンと玉ねぎのコカ焼き、マッシュルームの詰め物
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コトリ1号メモ : スペインの家庭料理をテーマにした本。「スペインの漁村から」「シェリー酒があれば」「スペイン流卵の使い方」「すり鉢とすりこぎスペイン流」「こんなにおいしい赤ピーマン」「やさしいデザート」の6章構成で、38種類のレシピを紹介しています。
周囲を海に囲まれたスペインは魚介の宝庫であり、シンプルな調理法を好むところは、日本と相通じるところがあると言えます。とはいえ、パプリカやクミンといった香辛料、柑橘類、オリーブオイル、シェリー酒、アーモンドなど、独特のアクセントはスペインならでは。素朴だけど、(日本人からすると)ちょっとひねりが利いている、そんな雰囲気の料理が多く紹介されています。

 

ヴィノッキオ山田宏巳の 新イタリア料理
優しさと愛情が生み出す、簡単に作れる、おいしい家庭の味』(暮しの設計No.197)

中央公論社 1990年
山田宏巳
◎ 全粒粉のパン
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コトリ1号メモ : 現在は「ヒロソフィー」オーナーシェフとして活躍中の山田宏巳シェフのレシピ本。
「簡単に作れる」の部分に若干の語弊があるようには思うのですが、若いころのものとはいえ、今や超カリスマシェフとして知られるシェフのレシピを見る機会なんてなかなかないので、ある意味、大変貴重な1冊かもしれません。

 

「蒸す」って、おいしい。 キッチンはいいにおい!

文化出版局 2000年 (1,400円+税)
吉田勝彦
◎ 蒸しいかだんご
Amazon 文化出版局

コトリ1号メモ : 東京・代々木上原にある中華料理店「jeeten(ジーテン)」オーナーシェフの吉田勝彦さんの本。中華と言っても吉田勝彦さんの中華は、所謂一般的に連想される中華とはひと味違い、「穏やか」「優しい」「軽やか」といった言葉がぴったりな味わいを特徴としています。
本書は、「蒸す」という調理法を軸に、吉田シェフの持ち味がいかんなく発揮された、吉田流中華を数多く紹介。「蒸して冷ます」「器ごと蒸す」「包んで蒸す」「揚げて蒸す、蒸して炒める」「魚介を蒸す」「蒸しスープ」「蒸すデザート」に分けて、43の料理を紹介しています。
蒸し器は、使い慣れないと少々億劫な道具ではあるのですが、ここで紹介されているレシピは、「蒸す」というひと手間によって美味しく仕上がるものばかり。「蒸す=ひと手間」ばかりではなく、「蒸す」からこそお手軽に美味しく作れるレシピもたくさん紹介されています。「蒸す」という調理法の多彩さを実感できる本だと思います。

 

となりの国のスープとごはん

角川SSコミュニケーションズ 2007年
李映林、ウー・ウェン
◎ ぶりのチゲ
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コトリ1号メモ : この本は、李映林さん、ウー・ウェンさんのおふたりが、自宅で、母として作る、家の味を紹介したもの。「おかわりの声がする定番おかず」「夏も冬も献立の基本はスープ」「旬を使えば何でも薬膳」「ペコペコおなかにうれしい主食」「身体を助けるデザート」の5章立てで、それぞれに韓国の、中国の、お母さんの味を紹介しています。
李映林さんは韓国では「薬食同源」「五味五色」、ウー・ウェンさんは中国では「医食同源」が食事の基本だと仰っておられますが、つまりはおふたりとも、食べるものがその人の身体を作るということを強く仰っています。国は違えど、家族の身体を思いやりながら献立を考え、作る姿は同じだと実感させられます。
中韓のお惣菜を1冊で見られるお買い得感も然ることながら、スタイリングが落ち着いた雰囲気で素敵なのも、個人的には好ポイントだったりします。ちなみに、表紙のほんわかした鍋のイラストは、ケンタロウさんによるもの。可愛いアクセントになっています。

 

私のインド料理

柴田書店 1983年
レヌ・アロラ
◎ 苦瓜の蒸し煮
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コトリ1号メモ : 東京・五反田にある、インド料理の料理学校「アロラインド料理学院」を主宰する、レヌ・アロラさんの本。今でこそ様々なインド料理の本が出版されていますが、83年に出された本書はそのはしりとも言える1冊。ムンバイにあるレストランで修行されたため、全体的には北インドで一般的とされる料理を中心に紹介しています。
インド料理というと、カレーとナンのイメージが強いかもしれませんが、勿論そればっかりじゃないわけでして。サブジ(蒸し煮)、ライタ・サラダ、アチャール、粉もの(チャパティなど)、米料理(ビリヤニ、お粥)など、北インドの味を幅広く知ることができる好著です。なお、本書掲載のレシピの一部は、現在発売中の『決定版 レヌ・アロラのおいしいインド料理』(2011年、柴田書店)にも、若干レシピを修正したものが掲載されています。

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『ばーさんがじーさんに作る食卓(4)2008』に登場した料理本を紹介するシリーズ

第1回
味澤ペンシー(1)、阿部なを / 河合真理(1)、有元葉子(6)[全8冊]
第2回
入江麻木(1)、ウー・ウェン(7)[全8冊]
第3回
上野万梨子(5)、上野万梨子 / SAZABY(1)、おおつきちひろ(1)、大原照子(1)[全8冊]
第4回
小川聖子(1)、落合務(1)、片岡護(1)、川上文代(1)、北村光世(2)、熊谷喜八 / 河田吉功(1)[全7冊]
第5回
佐藤雅子(1)、島津睦子(1)、周富徳(1)、白鳥恒夫 / 小田倉秀昭 / 田代和久(1)、鈴木珠美(1)、孫幼亭(※「亭」は、正しくは「女」偏に「亭」)(2)[全7冊]
第6回
高山なおみ(5)、竹下ワサナ / 大江ふみ(1)、ダニエラ・オージック / 横山淳一(3)、谷昇(1)[全10冊]
第7回
長尾智子(2)、濱崎龍一(1)、パンツェッタ貴久子(2)、久田大吉(1)、藤沼由美子 / ロレンツァ・ジッリ(1)、藤沼由美子(2)[全9冊]
●第8回
前田廸子(1)、丸山久美(3)、山田宏巳(1)、吉田勝彦(1)、李映林 / ウー・ウェン(1)、レヌ・アロラ(1)[全8冊]
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